いやしの道とは
 

いやしの道とは学びの見取り図底本「四部録」指導スタッフ朽名宗観 略歴大浦慈観・略歴横田観風・略歴

●いやしの道とは


大浦慈観  日本には茶道、書道、武道、華道、芸道、医道のように、何らかの具体的な技芸を身につけるプロセスを通して技芸の巧拙を超えた精神性を拓こうとする伝統があるのは、よく知られています。

 鍼治療の世界でも、『鍼道秘訣集』(御園夢分斉)、『鍼道発秘』(芦原英俊)などの古典が残されているように、古くから「鍼道」が標榜されて来ました。

 当会があえて「鍼道」と言わないで、「いやしの道」と称するのは、鍼灸治療を基礎に置きながらも、それにとどまらず、鍼や灸を使うかどうかも問題でなくなるような深まりと広がりのある立場から病む人が、安らかさを得ることを考えているからです。また、そのような場にあってこそ、鍼灸治療もより活かされることになるでしょう。

 「いやし」は、生命の根源とつながっています。今ここに生きている人間が、自分の生きている場ははたして安らかで心地良いものであるかを振り返れば、現時点だけを問題にするだけでは不充分です。地球上に初めてヒトが誕生した時、さらには原初の生命が誕生した時にまで立ち帰って考えなければならないようなことです。

 私たちは単に体としてあるのではなく、心をもった生命体として存在しています。従って「いやし」とは、このような生命体が存在しやすい根源の場へ回帰し、体と心が苦しみから解放されることと言えるでしょう。

 「いやしの道」では、まず辛く苦しむ人を楽にしてあげたいという「いやしの心(施無畏の心)」を持っていることが重要です。そして、「いやし」が最も良く実現できるのは、「いやし手」自身がいやされている時です。

 しかし、「いやし手」も悩み多く、弱さをも持つ人間です。病める人をいやすことを通して本来の自己に目覚め、いやすことの喜び、生きがいを与えてくれることへの感謝を知って、安心の境地に達する、すなわち、自他共に安心する世界を実現するのが、「いやしの道」です。



●学びの見取り図


いやしの道の模式図 (一)観念的知識
 『素問』『霊枢』『難経』をはじめ、現代中医学、西洋医学等、体系化、理論化された多くの知識を学び、理に埋没し山の裾野を広げます。

(二)四部録
 いやしの道・底本となる横田観風著の四部作。万病一風的治療法を理解し易くするために、四つの角度から解説。単なる学問のための書物ではなく、理の世界と理を離れた世界をつなぎ、道の世界へと導きます。

(1)『万病一風論の提唱』谷口書店
(2)『傷寒論真髄』績文堂
(3)『鍼道発秘講義』日本の医学社
(4)『経絡流注講義』医道の日本社

(三)基本の型
 指導者の点検を受けながら鍼治療の型を稽古し、四部録の内容を身心で修得し、鍼灸による「いやし手」としての完成へ。鍼という道具を自分の手の如くに使いこなし、無心になって患者の生命状態に合わせて事を為せるようになることを目指します。

(四)奥伝(境涯)
 いやし手の人間としての境涯の高まりを目指します。医者としての完成が地三昧であれば、人間としての完成が王三昧の境地で、これには「遠山無限碧層層」で限りがありません。


●底本「四部録」について


万病一風論の提唱 1) 『万病一風論の提唱』  谷口書店

 万病唯一風の体験悟得を、多方面から解説。いやしの道を実践し、行ずる者の指針となり、又、医学的のみならず、哲学的、宗教的、思想的バックボーンとなるもの。初学者はまずこの書から読み、常に座右に置いておくとよいでしょう。
傷寒論真髄 2) 『傷寒論真髄』  績文堂

 湯液の聖典『傷寒論』を万病一風の立場から解説。その特徴は、日本古方漢方の祖、吉益東洞が提唱した万病一毒の立場から、薬方を検討し、現在只今の病的状態をイラストを用いて図示したので、身体内部の毒のあり様と、外部に出現している症状との関係が一目で理解できること、又、各条文を検討整理し、病的状態の時間的、空間的変化の様相を図示し、簡単に理解できることです。
 これにより、今まで湯液家のみが読むべき書であった『傷寒論』が、生命や病気のあるべき様を示す書に変換されたので、鍼灸を道具とするいやし手にも役立つことにりました。

鍼道発秘講義 3) 『鍼道発秘講義』  日本の医学社

 江戸時代の葦原検校著『鍼道発秘』を万病一風の立場から解説。この本には、種々の病気に対する治療法が極めて簡潔に記してあります。その根底にある考え方は、万病一邪であす。初学者は、この書を患者に実地に試み、工夫参究してゆけば、必ず病苦がいやされてゆくことを体験できるでしょう。
経絡流注講義 4) 『経絡流注講義』  医道の日本社

 古典である『霊枢』経脈篇を万病一風の立場から解説。この篇は、いわゆる臓腑経絡説の体系を示したもので、これらの内容を種々検討し、それ以前の経絡現象の体験悟得から見直し、真の経絡流注の姿を探求したものです。本書は、万病一毒と万病一邪とをつなぎ、治療の際にイメージを作る上で重要な役割を演じます。


 この四冊は独立しておらず、それぞれ密接に関連しています。特に(2)(3)(4)は、それぞれ湯液、鍼、経絡と、全く異なる内容の本の如く感じられますが、奥底にあるものは一つです。これらは、万病一風的治療法を解説するために、便宜上、方便として異なる角度から説いたものです。

※書籍購入の詳細は、日本の医学社のページをご参照ください。


●指導スタッフ


会 長 朽名宗観(師範)
副会長 三輪圓観 堀 雅観 乙重潭観 中川和観(正教授)
指導者 倉田慧観  鈴木斉観 高橋妙観 舩坂樹観 藤田峰観
山野鵬観  伊藤翠観 越藤泉観 牛尾安観 野田仁観
伊東玄観  井上泰観 玉水雲観
河原燈観  養母忠観
前之園空観 村田底観 池内毘観 福嶋青観
石水露観  林 弘観 長沼蛙観 土方一観
正岡鳩観  吉田悠観 海老原照観(正教授)
石部愚観  松田源観(准師範)
師 範<湯液> 高木 眞観
顧 問 大浦慈観 海野流観 安田無観 石井道観(師範)
原田修観(准師範)
相談役 横田 観風(特別師範)



●会長/朽名宗観 略歴


大浦慈観 1960年 神奈川県川崎市生まれ。本名、朽名輝臣。
1983年 早稲田大学第一文学部を卒業。
     坪井香譲師創始の∞気流法により「身体の文法」の思想と実践を学び、指導員として国内外の講習会に携わり、現在にまで至る。その身体知を活かすべく鍼灸治療の世界に進む。
1996年 東京医療専門学校本科を卒業。
     横田観風師創始の「日本的ないやしの道」に参じる。機関誌『いやしの道』の編集を担当。
1998年 鍼灸・くちな治療室を開業。
2004年 当協会の正教授となると同時に関西支部の設立に関わり、指導に当たった。また、同年より平林僧堂にて野々村玄龍老師に参禅。
2008年 当協会師範となる。
2012年 第三代会長に就任。
 相模女子大学非常勤講師(「代替医学」及び「ソマティックス演習」を担当)。(社)日本の医学社・代表理事。

著書:『からだに触れる からだで触れる―「生命共感」への手がかり、足がかりとして―』(ヒューマンワールド)、共著『看護教育と実践』(学文社刊)。


●顧問(前会長)/大浦慈観 略歴


大浦慈観 1955年 栃木県宇都宮市生まれ。本名、大浦宏勝。
1977年 慶應義塾大学法学部を中退。
1988年 中国中医研究院広安門医院・国際鍼灸班に留学。
1992年 東京衛生学園専門学校・鍼灸マッサージ科を卒業。
     横田観風先生に師事、日本の伝統的鍼灸および古方漢方を学ぶ。
1994年 「はり・きゅう治療処 路傍庵」開業。兼ねて宇都宮東病院リハビリ室にて鍼灸外来を担当。
2007年  当協会師範および東洋鍼灸専門学校非常勤講師として若手鍼灸師を指導。
     当協会・第二代会長に就任。
2012年 会長を退任し、顧問に就任。
2014年 明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科修士課程を修了し、鍼灸学修士取得。
     日本の伝統的鍼灸を研究中。杉山真伝流遺徳顕彰会理事。
2020年 東洋鍼灸専門学校校長に就任。

著書:
『杉山真伝流臨床指南』(大浦編著、六然社)
『皆伝入江流鍼術』(大浦・長野共編、六然社刊)
『日本腹診の源流』(長野・宿野・大浦共編、六然社刊)
『秘伝・杉山眞伝流』(杉山検校遺徳顕彰会発行)を編集。
『杉山真伝流・表之巻』『杉山真伝流・中之巻』(和訓編集発行/大浦)。
『腹診による「毒」と「邪気」の診察と鍼灸治療』(ヒューマンワールド刊)


●創始者(相談役)/横田観風 略歴


横田観風 1944年茨城県土浦市に生まれる。
1973年東京工業大学大学院博士課程理論物理学専攻修了。
1976年東京高等鍼灸専門学校本科を卒業し、鍼灸治療院「観風堂」開院。
 福富雪底老師に禅の指導を受け、寺山旦中居士に筆禅道を中心とした東洋学を学び、江原樵右先生に茶道の薫陶を受けた。
 東西医道交流会・無為塾、日本古医道研究所を主宰し、湯液と鍼灸による癒しを日本的なる道に高めた「日本的ないやしの道」を創成し、医師・薬剤師・鍼灸師などを指導した。
 無為塾を解散後、1998年4 月「いやしの道協会」を設立し、特に鍼灸を中心とした「日本的ないやしの道」の指導をしている。

主著書:
『鍼と禅』(柏樹社)
『新版 鍼道発秘講義』(日本の医学社)
『経絡流注講義』(医道の日本社)
『万病一風論の提唱』(たにぐち書店)
『傷寒論真髄』(績文堂)
『吉益東洞大全集』(たにぐち書店)
『訓注 尾台榕堂全集』(日本の医学社)
『鍼灸による日本的ないやしの道(入門篇)』(日本の医学社)
『鍼禅茶話』第一巻〜第十二巻(自費出版)
※書籍の一部は日本の医学社のページより購入可能です。



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